心の積もる街

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気が付いたら迷い込んでいた。
その街は真っ白に染まっていて、数人の白いコートに身を包んだ人たちが、空から降ってくる結晶をスコップで集めたり散らしたりしていた。
「何をやっているんですか?」
僕は訊く。
白髭を蓄えたおじいさんは言った。
「この街には、いろんな人たちの心残りとか後悔が雪のように降り積もるんだ」
「後悔、ですか」
「そう。そしてここにいる人たちの仕事は、しんしんと降り積もる心を溶かしてあげること。だから、溶けやすいようにスコップで丹念に触ってあげるんだよ」
話を聴きながら辺りを見渡すと、七色に発光した心がふっと溶けていくのが分かった。
おじいさんは、あれがまさに心が溶けた瞬間だと教えてくれた。

実は、ここは夢の中の世界なんだ。ここで働いているのは傷つきやすい人。言い換えると人の痛みに敏感な人。
君もきっとそんな人なんだろう。
手伝ってくれるかい?
誰かの痛みを癒すために。
ファンタジー
公開:18/12/31 00:48

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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