前夜

12月23日。クリスマスイブの前夜、私は路上でギターを弾いて歌っていた。

ギャラリーは疎らで、所々、客と客の間に大きな空間が空いていた。

私は、高校三年生の時、両親の反対を押し切って歌手になるために上京をした。

プロになるための方法を知らなかった私は、ただ闇雲にギターをかき鳴らしていた。

正直、自分の居場所を見つける旅に出たようなものであった。
高校三年生の時、周りの友達が次々と大学合格をしていく中、一人取り残された私は特に将来に希望を見いだせずに、回答を引き延ばしてはいつの間にかギターを握っていた。

口をマイクに近づけ、白い息に音を乗せる。

ギャラリーは、肩を寄せ合いながら、私の歌でしんみりとした気持ちになっている。

私は赤く目を腫らしながら、歌い続ける。
いつまでも見えなかった答えは、人を幸せにすることであると知ったのであった。