親子煮

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先代が亡くなり、急遽、私が社長を継ぐことになりましたが、みんな変わらず頑張ってくれてます。ベテラン社員は悲しみの裏返しなのでしょう。いつにない厳しいゲキを飛ばしていますよ。

「たかが缶詰、されど缶詰だ。会社が変わるこのタイミングで、俺たちも変わらなきゃならん。いつまでも看板商品の〈いとこ煮〉に頼ってちゃいかんのだよ!」

動き出しているのは、新商品〈親子煮〉の開発です。でも、先代が再発見した小豆との組み合わせの妙を、そう簡単には超えられません。喧々諤々です。

「大豆と豆腐ってのは、どうです?」
「うーむ。距離感はいいな。まずは試作だ。急げ!」
「材料は揃ってます。大豆も戻ってます」
「でかした!」

なかなかの活気でしょう。だから実は、ちょっと言い出しにくくなっているんです。

先代…いや、お義父さん。あの最期の言葉って、やっぱり私に向けてですよね。




『次は親子が、いいな』
その他
公開:18/12/30 05:10

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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