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東西を分断した巨大な壁には、包丁を手に持つ少女の絵が描かれていた。

人々が寝静まった真夜中になると、妖魔の姿をした少女は壁から出て、静黙な町へと民の血を求めて出向くのであった。

無知な民達は、家のドアの鍵を不用心にも閉め忘れ、招かざる客を歓迎してしまうのであった。

少女は或る家に上がり込むと、足音一つたてずに、部屋の中を探し回り、狭い部屋で眠っている老婆を発見した。

少女は軽い体を老婆の腹の上にのせ、包丁を両手で握り、振り上げた。

「今日の生け贄はお前だ」
少女は躊躇なく、老婆の喉頭隆起に包丁を突き刺した。

唐紅の血が白いベッドのシーツの上に飛び散る。
老婆は狼狽する間もなく、息絶えた。

少女は老婆の身体に溶け込み、はらわたの中に消えた。
ホラー
公開:18/12/29 21:54

神代博志( グスク )









 

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