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結婚指輪をはめた左手で相手の右手を握り、円を作る。
二人は天から授かる宝石を一つ選んでいた。

「アクアマリンなんてどう?」
「聡明で勇敢な海の色の石だね。僕は逆に炎のような赤色の、ルビーも綺麗だと思うな」
「愛情に溢れた石ね。ふふ、わたしたち期待し過ぎかしら」
「僕たちの想いを受け止めきれず、石が割れてしまうかもしれない」
「じゃあ平等に愛を分けて、二つの色を混ぜた――」

***

紅子が目を覚ますと、隣から夫である拓海の寝息が聞こえた。
枕元には赤ちゃんの命名辞典が開いたまま置いてあり、昨晩二人で話しながら眠ってしまったようだ。
なぜか何も決まらなかった記憶と、一つ候補を決めた記憶が綯い交ぜになっており――

「紫乃?」

口をついて出た名前は、驚くほどしっくり耳に馴染んだ。
その後、アメジストに似た色の名を貰った長女は夫婦の心に平和をもたらし、家族の輪を更に美しく輝かせたのだった。
ファンタジー
公開:18/12/29 16:59
更新:18/12/29 16:59

夏巳

Twitter@N_natsuo

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