風をつかまえたからくり人形

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僕の父は、からくり人形屋を営んでいる。
ある夜中、僕は不意に目を覚ました。
しんとしたはずの家の中から、何かの音が聞こえる。
カタカタ、カタカタ。
僕は、恐怖と好奇心に突き動かされて、音のする方へと歩いて行った。
売り場の中の、一番目立つところに置かれている人形──ネジを巻くと太鼓を叩きながら足踏みをするのだ──が、動いていた。しかも、その置き場ではなく、床の上を。人形は、外へ出る扉の方へと歩いていく。僕は、扉の鍵を外し、あけた。人形は、僕の気のせいだろうが、どこか嬉しそうに外へと歩いていった。
一度もネジを巻き直していないにも関わらず、人形は歩き続けた。
潮風の吹く、防波堤の上。そこで、人形は止まった。向かい風を受けながら静かに立っていた。

朝、父の叫び声で目を覚ました。
「おい、人形がいなくなってるぞ!」
僕は、その人形の居場所を知っている。
SF
公開:18/12/29 08:28

彩見 唯

日本語、特に言葉遊びが好きです。
twitterでは「りーまーむ (@Cogito_live)」というアカウントで短歌を詠んでいます!

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