0
3

これは私が子供の頃、田舎の祖父の家に行った時の話だ。
野山を駆け巡ることに夢中になっていた私は、いつの間にか迷子になり帰り道が分からなくなっていた。
助けを呼ぶ声は山彦となり、反響するばかりで返事はない。心細く、今にも泣き出しそうだった。そんな時だ。
リーンリーン。ゴーンゴーン。
どこからか鐘の音が聞こえてきた。
私は音のする方に歩き出しす。
そこは一面が開けた野原で鬼百合と高砂百合が咲き乱れていた。鐘の音はそんな二つの百合から響いている。
「やっぱりここにいた」
母だ。
私は母に飛びついた。
「お母さんもね、昔迷子になってここに来たの。今の貴方と同じように鐘の音に誘われてね」
私の頭を撫でる母の手は優しかった。

あれから数十年。今、私の娘もまた山で迷子になり、百合の奏でる鐘の音に導かれこの野原に来た。
母の名は百合。私の名は百合子。娘の名前は小百合。
私達はここの百合に縁があるらしい。
公開:18/12/30 19:47

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容