必殺技

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俺の名前は「余(あまる)」という。8人兄弟姉妹の末っ子だ。ちなみにすぐ上の姉は「留子(とめこ)」という。願い虚しく、それでとまらなかったので、余りが出たわけだが正直笑えない。
生まれる前から余り扱い、生まれてからも余り呼ばわり。あまる、あまると残り物のように毎日呼ばれて可愛がられた。

けれど俺は知ってしまった。俺のような余りを出さないための魔術と技を。今日俺はその術と技を、父さんと母さんにかけるつもりだ。もう子供を増やしてはならない。「余(あまる)」の次はきっと「不要(いらぬ)」になるだろうから。

7人の子供たちが寝静まる深夜、不自然に盛り上がった両親の布団を俺は勢いよく剥いだ。
仰向けに寝転がる母さんに箸(杖など家になかったから)を向けて
「卵管結紮術!」
その上に覆いかぶさる父さんに手のひらを向けて
「精管結紮法!」
気を込めて、思いを込めて叫んだ。

これ以上家族はいらないんだ。
その他
公開:18/12/30 18:05

吉田和人

いろはも知らぬ初心者です

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