兄さんの独白

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突然のできごとだ。僕の視界が黄色一色に染まった。迫り来る眩しさに怯んだ次の瞬間、真っ青になる。脳天から鈍器で打ちつけられたような鋭い痛み。びいいんと衝撃波が全身を駆け抜け、指一本動かすこともできやしない。家族のなかでも一番の長身で、体躯のよさを誇るこの僕が。
……そうだ、家族。一緒にいた家族は無事だろうか。
身長はそんなに高くないけれど、恰幅のよさは一番の父さん。おおらかでよく働く一家の大黒柱。優しくてしっかり者の母さん。行く先をいつも指し示し、なんでも率先してやってみせてくれる我が家の要。それから、おしゃれ好きの妹。おとなしいけれどいつも赤ちゃんについて行ってくれる面倒見のいいやつ。そして、赤ちゃん。ちいさくてよく動く、かわいらしい存在。
一体、みんなはどうし「痛っ」「どうしたの、お母さん」「今日、ママさんバレーで突き指したのよ。中指がとくにひどくて、ちょっと動かしただけでも痛いくらい」
ファンタジー
公開:18/12/30 08:14

吉田和人

いろはも知らぬ初心者です

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