喪中はがき

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『今度』『そのうち』『また』が口癖だった。
時間は守らない。約束はすっぽかす。借りた物も返さない。
意地悪で、嘘吐きで、人の嫌がる顔が大好物で。
間違いなく、至上最低最悪の腐れ縁だった。

お前が死んだら、万歳三唱で高笑いしてやる……!
苛立って怒って、我慢の限界に達するごとに誓った。
何年も、何十年も、喧嘩しながらずるずる続いてた。


けど、いざ幕切れが来てしまうと、案外途方に暮れる。
喪中はがき。向こうが出す羽目になるなんて、思ってなかった。
まさか私の名前が裏に来るなんて、思ってなかった。

こんなに取り乱して、泣き喚く顔を見るなんて。
それがこんなに――胸を掻き毟られる程、痛いなんて。
夫婦でいた、長い長い間、ただの一度だって思った事なかった。


二度と言えなくなる、今になって気付いた。
『愛してる』って、初めて気付いた。
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公開:18/12/28 01:25
明けない夜が来るかもしれない。 言いたい言葉は、言える時に。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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