ボクの役目

ボクの役目はお見送り。
お散歩に行く爺ちゃんとワンコ、会社に行くパパさん、学校に行く息子さん、パートに行くママさん、夕食のお買い物に行く婆ちゃん、フラリとどこかに行くニャンコ。
ボクはみんなが気持ち良く外に出られるように、とにかく元気にお見送りをする。
「イッテラッシャイ！」

ボクがこの役目に就いてから何十年が過ぎただろうか。
爺ちゃん、婆ちゃん、パパさん、ママさん、ワンコにニャンコは、もういない。それはボクも同じ。息子さんは別の地で今では爺ちゃんだ。
もうすぐお盆がやって来る。以前とは役目の変わったボクの出番。
さぁ、年に一度の大集合。一足お先に定位置へ。家族を代表して、ボクが元気にみんなをお迎えするよ。
「オカエリナサイ！」


「爺ちゃん！」
「どうした？」
「今、キュウカンチョウみたいな声した！」
「お。今年も揃い踏みかな？　ただいま」

玄関に残された鳥かごがキィィと、笑った。