期間車

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「冬は嫌いだ」車窓を眺めながら君は呟いた。「なぜ?」「弱い者に冷たいから。」そっけない言葉。夏を通りすぎるまでは元気だったのに、秋に入ってから横顔は悲しい。

凍てつく寒さは命を奪う。弱者は生きていけない事を私もよく知っている。乗客は二人ぼっち。1両のSLはチョコレート色の煙を吐いて秋を通りすぎ、次に澄んだ冬空の色になって静かに湖の上を走る。いつの間にか頭上は霧氷のトンネルになっていた。

君の嫌いな季節に見せたいものがある。「降ります」君の袖を引いて向かったのは、竹灯籠が続く小道。その先に古民家があった。引き戸を引くと入口近くに囲炉裏があり、ちろちろ火が灯っていた。

「あんたのことだから、どうせ綺麗な雪景色とか言うんだと思った」君の声はここに来て初めて少し震えた。それは静かな高揚だった。

私と君が記憶している同じ場所、同じ時間。やっと泣けた君の隣で、私は炭が赤く光るのをただ見つめた。
ファンタジー
公開:18/12/27 09:51
更新:18/12/27 16:57
行きたい季節に 運んでくれる期間車 (日にち、時間指定必須)

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

104.がおー

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