「トウミン・ベア」

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冬。とある島の洞窟で一匹の熊が寝ていた。
そんな洞窟に、胡散臭げな二人の男が忍び込んだ。
「おい、熊だ。なんでこんなところに?」
「冬眠、か?」
「洞窟で冬眠なんてするのか?」
「それより、あの寝ている熊の後ろだ。あそこに高く売れるという『命の湧水』がある」
「了解。早くいただいて、さっさと帰ろうぜ」
二人が抜き足差し足、熊の背後に回り込もうとした時だった。

パキッ。

木の枝か何かを踏んだ音が、洞窟内に響いた。
「誰だっ?!」
熊が跳ね起きる。
「ヤベッ! 熊が起きた!」
「というか……」男たちが顔を見合わせる。
「熊が、喋った!?」
「誰が熊じゃ! わしゃここの島民じゃ! 勝手に人の部屋に入りよって!」
そう言うと、熊はスポッと頭を外した。中の人はごく普通のオッサンだった。
「き、着ぐるみぃ?!」
「寝ぐるみ、じゃ!!」

そう、ここは冬眠している熊(ベア)ならぬ……。
島民の部屋。
その他
公開:18/12/28 23:30

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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