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僕たちは数々の事件や体験談から、幽霊は実際に存在するものだと思っていた。が、外国で行われた実験によって、幽霊は脳による錯覚であったことが証明された。
実験が成功したのにもかかわらず、僕たちは暗澹たる夜に瞳の奥で影を作り、遠くの道に投影している。
それは、幽霊が存在しないと分かっているのにもかかわらず、生理的な現象により幽霊はミステリーであって欲しいと願うからであった。
行き交う車のヘッドライトが幻影を照らし出す。
そして、錯覚の願望が作り出した虚心が影を失い道の上に佇む。
夜の帳の揚羽蝶が冬の天井へと伸びていく。
地面を這い進む蜥蜴は半分尻尾を失っていて、再生の中に再生を思い出しては目を光らせていた。
僕たちは幽霊が存在しなくても、科学で否定されたとしても、構成を練り、作り出すのである。
僕たちは既に滅亡していたとしても、生きていると実感が湧いているのである。
ホラー
公開:18/12/28 21:29

神代博志( グスク )









 

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