家族になりたい

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 最初、コロタンは捨て犬だった。
 羽深夫妻が散歩の途中、河原で保護したのだ。小さくてコロコロしていたので〝コロタン〟と名付けたが、実は大型犬で、外見はゴールデン・レトリバーそっくりだった。もちろん血統書などは無かったが、羽深夫妻はコロタンにありったけの愛情を注いだ。
「コロタンは利口だなぁ。まるで人間の言葉がわかるみたいだ」感心する夫に妻は、
「あらあなた。今ごろ気づいたの?」と笑った。家族になったコロタンは幸せだった。
 羽深夫妻が相次いで亡くなると、コロタンは河原へ走り出した。何だろう、この気持ちは。夫妻を失った喪失感を遥かに越えて体中から湧き上がる、温かくも熱いこの想いは。
「そうだ。家族をつくろう。次は、あの人たちのような家族を」瞬間、宇宙船が光った。
 犬だったコロタンの姿は、みるみるうちに人へと変わった。その顔や体は夫妻によく似ていた。コロタンはゆっくりと歩き出した。
ファンタジー
公開:18/12/28 18:18
更新:18/12/30 14:31
家族 コンテスト

二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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