感動旅行

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「ドーベ、イルバンニョ?」
雪子は、流暢なイタリア語でバルの店員に尋ねた。
向うにあると教えられ、雪子は注文したキャラメルマキアートも待たずにまっしぐらにトイレへ小走りして行った。
「何? 今の。お姉ちゃん、何て言ったの?」
「さあ・・・」
母は、呑気に答えた。程なくして晴れやかな笑顔で戻ってきた雪子。
「超、冷えた。海外旅行デビューで大失態するところだったわ。」
そこへ、タイミングよくコーヒーが運ばれてきた。
「で、一つ疑問なんだけど。何で話せる訳?」
「何のこと?」
「さっきの、エルニーニョ、なんとか・・・。」
「ああ、それ。何だか知らないけどすっと言葉が出てきた感じ・・・」
「ふぅん。そうなんだ。」
このスピリチュアルな出来事に、二人は静かに感動していた。
母は、一人ほくそ笑んでいた。雪子がお腹にいる時に、イタリア語にはまり、胎教がてらラジオのイタリア語講座を聴いていたのだ。
その他
公開:18/12/28 18:18

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