運命の肖像
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その画廊は、とある街の片隅にあった。
『運命の肖像』という名の一枚の絵。だが、キャンバスは真っ白だった。詳細はこうだ。
〝運命の相手だけが、浮かんで見える〟
噂を聞いた人々が、こっそりと画廊を訪ねては胸踊らせる。私も最初はそうだった。
「また、見に来てらしたのですね」まだ若い女主人に、初めて声をかけられた。私は落ち着いて、頬のほくろを撫でながら答えた。
「ええ。しかし、なかなか絵は浮かびませんね。あなたには見えるのですか?」
「いえ、私には」「あ、すみません。つい」
ある日、女主人は動揺しつつ私に言った。
「今朝、不思議なことにはっきりと、私にもこの絵が見えたのです。お相手は茶色い髪で、緑の瞳で、頬に並んだ二つのほくろが……」
「私にも見えました。いえ、ずっと前から見えていたのです。二つに編んだ金の髪が美しい、盲目の女性が」私たちは見つめ合った。
これが、妻と私の馴れ初めです。
『運命の肖像』という名の一枚の絵。だが、キャンバスは真っ白だった。詳細はこうだ。
〝運命の相手だけが、浮かんで見える〟
噂を聞いた人々が、こっそりと画廊を訪ねては胸踊らせる。私も最初はそうだった。
「また、見に来てらしたのですね」まだ若い女主人に、初めて声をかけられた。私は落ち着いて、頬のほくろを撫でながら答えた。
「ええ。しかし、なかなか絵は浮かびませんね。あなたには見えるのですか?」
「いえ、私には」「あ、すみません。つい」
ある日、女主人は動揺しつつ私に言った。
「今朝、不思議なことにはっきりと、私にもこの絵が見えたのです。お相手は茶色い髪で、緑の瞳で、頬に並んだ二つのほくろが……」
「私にも見えました。いえ、ずっと前から見えていたのです。二つに編んだ金の髪が美しい、盲目の女性が」私たちは見つめ合った。
これが、妻と私の馴れ初めです。
ファンタジー
公開:18/12/28 18:07
更新:18/12/30 14:31
更新:18/12/30 14:31
家族
コンテスト
二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。
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