おさめる者

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いつも過ごしているあの場所には、魔物が棲んでいる。
これは秘密でもなんでもなくて、人が働く場所には必ず棲んでいるものなのだ。
場所によって特徴の違いはあっても、大なり小なり厄介であることには変わりない。
魔物はおとなしいときもあれば突然暴れ出すこともあるため、なかなか油断できないのだ。

今年も一年どうにかなだめ続けてきたが、今日だけはそういうわけにもいかない。
私たちのところでは毎年くり返されてきた決戦の日があるのだが、今日がその日だからだ。
年を越すという大切なこの時期に暴れてもらっては困ると、気合を入れて大人たちが対処にかかる。
ここできちんと魔物を落ち着かせておけば、休戦の時間は短くても年明けまではゆっくり過ごせるはずだ。

始まりの鐘が鳴る。あとは時間との戦いだ。
いつも通りのふりをして、少しだけ明日への期待を秘めて持ち場に着く。

「仕事」という名の魔物をおさめるために。
ファンタジー
公開:18/12/28 10:52

天宵 遥

言葉遊びや少し不思議なお話が好きです。
SSGプチコン1「花」優秀賞入賞

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