母さんの秘密

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父さんがいなくなった。
母さんと喧嘩でもしたのかと思ったが、いつまで経っても帰ってこない。あれ以来母さんの顎には絆創膏が貼られている。
二十歳になった俺に、母さんは「話があるの」と言った。
まさか父さんが死んだ?離婚?逮捕されたとか?
俺の心配をよそに、母さんは絆創膏をゆっくり剥がす。
「髭が一本あるの、わかる?」
‥なんだ、そんな事か。半笑いの俺に、よく見て。と母さんは言う。
確かに髭が‥一本‥髭じゃない‥父さんだ。
父さんが正座をして、こっちを見ている。
口をパクパクさせているが、小さすぎて見えない。多分、すまん、だと思う。どういうことだ?
母さんは、黙っててごめん。あの日、突然髭が生えて、よく見たら父さんだったの。誰にも言えなくて‥
母さんは泣き出した。泣きたいのはこっちだ。
「泣くなよ、母さん。大丈夫だって」
気づけば俺も泣いていた。母さんの顎を見ると、父さんは涙の海に溺れている。
その他
公開:18/12/25 21:52

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