東へ

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 ある日、男は気づいた。今日の日の出とともに、自分は東に向かって歩き続けなければ死ぬ、と。
 理由などない。それを定めたのは、神か、それとも悪魔なのかは分からないが、ともかく彼は東に向かって歩き続けないと死ぬのである。その事実は厳然で確然で、そして判然としていた。
 男は我が身の不運を嘆いたが、そんなことをしても無意味だった。彼に許されたのは、ただ東に向かって歩き続けることのみ。
 日の出が近づいてくる。男は考える。歩き続けるだけの人生に意味などあるのか。いっそ、このままここで死んでしまおうか。だが、やはり死ぬのは怖かった。
 山際が明るくなってくるのを見て、男は意を決し、震える足で一歩、東に向かって踏み出した――。

 その日、世界は球体ではなく、永遠に続く平面であることが証明された。
SF
公開:18/12/25 00:35

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