ないものはないのよっ！

「ママー、お腹すいたー」
金曜の夜、一人娘が泣きながら訴える。
「ごめんね、晩御飯が無くて」
夫の会社は週休制。毎週金曜日が給料日だ。しかし夫が帰ってくるのはいつも深夜。金曜の夜は一番お金が無いときだ。
「お水でお腹がたぷんたぷん。アキちゃん水風船になっちゃう」「ママのお腹もたぷんたぷんだね。あ、これはお水じゃなくて脂肪か」
さっきまで泣いていたのに、人の腹をぷよぷよつまんで遊び始めた。
「パパ、ケーキ買ってきてくれないかなぁ」
あるはずもない夢を語る娘。
「そうだ、アキちゃんおでんの絵描けるよ」
描いてどうするのだ、娘よ。余計にお腹が空くだけだよ。しかし娘はすでに絵を描き始めている。おでんにケーキ。そして、描きながら泣く。
「ママー、お腹すいたー」

じゃかあしい！無いものは無いんじゃあ。黙って寝れ！

喉元まで出かかる言葉をぐっと飲みこみ、来週こそは節約しようと思うのだった。