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「私はこれで会社をやめました」

そう言って友人は小指を立てる。
懐かしい。若い子達には理解できないだろうが昭和生まれのおじさんである私はその行為に大いに笑った。

「そうかそうか。仕事人間だったお前にもついに恋人が出来たか。でも、だからって会社をやめることはないだろう。もしかして、相手が上司の奥さんだったりして?なんてな」

友人に限ってそんなことはないだろうが一応茶化しておく。
そして珈琲を一口飲み、窓の外に目を向けた。

今、外ではいつも働いている会社が突如消えたことで困っている大人が右往左往している。
大勢のテレビ取材班がやってきては「突如、会社が神隠しに遭った」と大騒ぎだ。
こいつが会社であることをやめ、その建物自体が消え去った。焦るのも当然だろう。

友人と目が合う。
友人の瞳の中で一人の女性が「ここから出して」と泣き叫んでいる。

「ご愁傷様」

私は彼女にそれだけ伝えた。
ホラー
公開:18/12/26 19:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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