小さな掌

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指に触れるとぎゅっと握る小さな掌。
把握反射というらしいが、どうでもよかった。
いつまでも離さない小さな掌。
大きくなっても、後を追ってくる小さな掌。

「この子、甘えん坊なところがありますね。すぐに、手を繋ごうとするんですよ」

妻が小学校の先生にそんなことを言われたらしい。
暗に子離れを仄めかされたようで苛立った。

私は触れるその手を握り返すのをやめた。
小さな掌はシャツの端を代わりに掴んだ。



澄みきった寒空の下、横断歩道で待っていると、ポケットに突っ込んだ右手をあの手が掴んだ。
「熱!」
「あったかいでしょ!」
彼女は持っていたカイロを見せびらかした。
私はポケットの小さな掌を握り返した。
紅葉のように小さかったその手を。大きくなってもやっぱり小さいその手を。

「待ってお姉ちゃん」
後ろから走ってきた妹。
「走ると危ないよ」
もう片方の小さな掌は、妹の掌をやさしく握った。
その他
公開:18/12/26 19:16
更新:18/12/27 23:41

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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