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6斤の食パンを持って海へと歩くおばあちゃんの背中を追った。テトラポットの真ん中におばあちゃんが仁王立ちになると最初は2、3羽だった黒い鳥がみるみる増えて空一面を覆った。よく見ると黒い集団はおばあちゃんの周りを回転するようにぐるぐると回っていた。
「…空のブラックホールや。」
呆気にとられて呟いた。
「なにぼーっとしとる。餌やるよ。」
とおばあちゃんは空にパンを放った。何十羽の鳥が競うようにパンに食らいついた。
「世の中にはなぁ、本当にどうしようもないことっていうのがあるやろう。」
とおばあちゃんがパンを放りながら言った。
病気になった双子の妹、同時に生まれたはずなのに元気な私の姿がブラックホールにぼんやりと浮かんでは吸い込まれた。
「でもなぁ、この自然の前で人間は無力や。いろんなことを受け入れてな、笑って生きにゃいかん。」
真っ黒だった空はいつのまにか澄んだ青に変わった。
その他
公開:18/12/26 18:24

ミルクティー( 愛媛県 )

本を読むのが好きで、いつか自分もこんなふうに自由に文章が書けたらいいのになぁと思って始めました。本を読むと今まで上手く説明できなかった感情を言葉にしてくれてスッキリすることがあります。いつか私もそんな風に人の繊細な感情を文字に起こせるようになりたいです。未熟な文章ですが目を通していただけると嬉しいです。

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