猫踏んじゃった

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「猫踏んじゃった、猫踏んじゃった、猫踏んじゃっ踏んじゃっ踏んじゃった!」
冬の夜の青と積もる粉雪、浮かび上がる赤煉瓦の家、煙突、暖炉の暖色。それらをぶち壊すのは家の中、ハンマー響くピアノのバリトンの音だった。
「ニャア」奏者の男の愛らしい友人が赤いラグの下から這い出てきたが、男は夢中で気づかない。
「悪いー、猫めー、爪をー切ーれー!」
調子に乗って足を高く上げて下ろした男は飼い猫の尻尾を踏んでしまったが、その事にも気づかない。
「ニャー‼︎」
暫くして弾き終わった男は、暢気に愛猫を探し始める。すると窓の外に一杯の巨きな愛猫の顔が下りてきて、また上昇する。男は床ばかり見ていてまだ気づかない。
「グシャアン!!」
青い幻燈に浮かんでいた赤茶の影絵が潰れ、ピアノも暖炉も跡形もない。代わりに巨大な猫の脚が夜の闇に吸い込まれてゆく。
猫踏んじゃった、猫飛んじゃった、猫すっ飛んじゃって、もう見えない。
ホラー
公開:18/12/26 18:07
更新:19/06/11 08:07

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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