赤い首輪に金の鈴

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 真っ赤な首輪に金の鈴をつけられて、黒猫は、静那の膝でくったりとしていた。
「疲れたんだな。でも目が覚めたら、鈴なんて、産まれた時からついていたみたいな顔をするんだぜ」
 霧尾の言葉に、静那は膨れ面をしてみせた。
 猫は、静那が作る腕の輪の中で、時折、後ろ足を突っ張って、静那の腹部に鼻先を突っ込んだ。
 静那がコーヒーカップを手に取る。猫の手がキュッと丸まる。
「そいつが来て、もう何年になる?」
「忘れたわ。ずっといるのよ」
「猫は十年で化けるっていうぜ」
「百年。でも化けてもいいわ。死んじゃうより、ずっといい」
 ストーブの炎の音に、時雨の音が混じる。「あ」と静那が短い声を上げる。
 猫が寝返りを打ち、そこだけは真っ白な腹を上にむけて、静那の腕の囲みから抜け出そうと、くねくねともがき始めた。金の鈴が細かく震えた。
 霧尾は、その鈴の音が痛いほど鼓膜に響いてくるのが、たまらなく不快だった。
恋愛
公開:18/12/26 13:46
更新:18/12/26 17:04

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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