その顔が見つめたい

美術の授業。今日は隣の子とペアを組み、似顔絵を描くというもの。
私の隣は女子の間で冴えない君と呼ばれている男子。
「よ、よろしく」
「可愛く描いてよー」
「任せて！」
普段オドオドしている冴えない君にしては力強い言葉だ。

冴えない君が黙々と筆をはしらせている。キャンパスに向かう真剣な表情が少しカッコ良い。
よく見ると睫毛が長くて、意外と整った顔をしている。じっと見つめられると胸が高鳴る。

「なに、これ」
背後で不満げな声が上がった。島田さんだ。
どうやらペアの男子が描いた似顔絵が気に入らないらしい。確かに、その絵は誰がどう見ても「へのへのもへじ」だった。

「うわ、僕にそっくり！」
私たちも完成した絵を見せ合う。絵は得意な私だけど、冴えない君の絵も、うまい。でも、この絵の私……。
「可愛すぎない？」
「見たまんま描いたんだけどね」
「えー？」
私たちは見つめ合って、照れ笑いを浮かべた。