美人くん&野獣さん

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「済みま……」
「ごめん……」
今度は微妙にずれた。
――落ち着け俺。まず荷物を拾え。閉館時間過ぎてる。
「……はい」
「はい!?」
うわっ、接近しないで!そうだ、こういう時は深呼吸――待て、それじゃ怪しさ倍増――。
「どうぞ、本」
再び、落ち着け俺。彼女が善い人で助かった。冷静に、礼を言って退散しろ。
ほら、彼女震えてる。こんな可愛い子、これ以上怖がらせるな。細心の注意で受け取り、書架に戻す。
「済みません、ご迷惑を」
「……4回。『済みません』て」
「あ、済みません!……」
笑ってる。気付いたら俺も笑えて。ただ笑えた。
「自己紹介まだね。私、やじまとおこ。八の島に十の子」
「鈴野です。ベルに野原。下は……美人で、よしみ」
「鈴野美人。可愛い名前。ベルの、美人……」
「八島十子、謎々みたいです。やっつと、じゅう……」

「美女と」
「野獣」

次の瞬間、二人で爆笑したのは言うまでもない。
青春
公開:18/12/23 21:30
更新:18/12/24 01:11
図書室のおとぎ話⑨ ※ベルはフランス語「美しい」が 語源だそうです

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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