聖夜の問いかけ

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あなたは神を信じますか?
聞きなれた台詞に呼び止められた。
「僕は何も信じない」
吐き捨てるように悪態をついた。クリスマスだと言うのについさっき彼女にフラれたからだ。
「僕はもう自分以外何も信じない」
言い聞かせるように強い言葉で呟いた。
「それは難しい話ですね」
顔を上げると、彼は微笑んでいた。

「今日、なにでここへ来ましたか」
「電車ですが」
「その飲み物はなにで買いましたか」
「なにって、現金で」
またニッコリと彼は笑った。

「あなたは今日、いつも通り鉄道会社が電車を動かしてくれることを信じてここへ来た、そして現金を渡せば飲み物を買えると信じてレジに行った」

はっとして顔を上げた。

「世界は信用でできている。あなたはこんなにも不特定多数の人間を信じることが出来るのです。」

彼はまた優しく笑った。
喧騒の中で置き去りにされていた心がぽうっと暖かくなるのを感じた。
その他
公開:18/12/24 15:40

tom( 神奈川 )

ゆるゆると書いてます^^自分で読んでおもしろいと思うような文章が書きたいです!よろしくお願いします!

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