プライド

南青山にあるブティック。マネキンにはすべてQRコードが付けてある。客がそれを読み込めば、マネキンと同じセットが買えるのである。

ところがあるマネキンだけQRコードを付けていない。店員がマネキンを説得する。「ねえ、マネ美ちゃん。QRコード、付けてくれない？」
マネ美が言う。「何度も言ってますけど、私が納得するセットアップでなければ付けません」「私は南青山でもトップクラスのマネキンです。その私がお勧めするには、それなりのものでなければ」

冬になった。突然その日はやってきた。美しい光沢のカシミアセーターにスカート、そしてアウター。マネ美は初めてQRコードを付けても良いと思った。
「店員さん、QRコード付けてちょうだい」マネ美の言葉に驚きつつもQRコードを付ける。しかし、そのセットはなかなか売れなかった。マネ美は不安になって隣のマネキンに確認した。

「マネ代ちゃん、私、QRコード付いてる？」