眼鏡をかけた日
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初めて眼鏡をかけたのは小学4年生のときだった。
「今日からフジ君は眼鏡をかけます」
教壇でそんな眼鏡宣言を否応なくされた僕は先生を恨んだ。
「眼鏡やだよ。メガネザルとか、からかわれるし、サッカーだってやりにくいし」
そんな僕の思いの丈は、母さんの耳を素通りしていた。
「仏壇に夕御飯置いてきて」
おじいちゃんが死んでから、仏壇に白いごはんを置くのは僕の仕事だった。
かっこよく眼鏡をかける遺影を恨めしく思うと、視界の隅に気配を感じた。白いモヤが眼鏡の縁に見えた。
眼鏡をはずすとモヤは見えなくなり、かけると縁の外にだけ見えた。
モヤはときおり姿をかえて、視界の外を泳いでいた。
僕は楽しくなり、仏壇に置いてあるおじいちゃんの銀縁眼鏡をかけてみた。
合わない眼鏡に頭がくらくらすると、
「ははは………おまえには合わないよ」
やさしい声が聞こえた。
白いモヤは見えなかった。
「今日からフジ君は眼鏡をかけます」
教壇でそんな眼鏡宣言を否応なくされた僕は先生を恨んだ。
「眼鏡やだよ。メガネザルとか、からかわれるし、サッカーだってやりにくいし」
そんな僕の思いの丈は、母さんの耳を素通りしていた。
「仏壇に夕御飯置いてきて」
おじいちゃんが死んでから、仏壇に白いごはんを置くのは僕の仕事だった。
かっこよく眼鏡をかける遺影を恨めしく思うと、視界の隅に気配を感じた。白いモヤが眼鏡の縁に見えた。
眼鏡をはずすとモヤは見えなくなり、かけると縁の外にだけ見えた。
モヤはときおり姿をかえて、視界の外を泳いでいた。
僕は楽しくなり、仏壇に置いてあるおじいちゃんの銀縁眼鏡をかけてみた。
合わない眼鏡に頭がくらくらすると、
「ははは………おまえには合わないよ」
やさしい声が聞こえた。
白いモヤは見えなかった。
青春
公開:18/12/22 18:04
更新:18/12/22 18:10
更新:18/12/22 18:10
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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