家族強制

　快適な水槽の中、悠々自適に暮らす日々。　
「ニモ、あんたにクリスマスプレゼント」
　そこへあてがわれたデカいオス一匹。
　ぽちゃん。
「いい胸ビレしてるじゃない。オレ好み」
「げっ。気色悪い。あ、こっちに来るな！」　
　迷惑千万。高速旋回でオレは逃げた。
「クマノミは体の大きい方がやがてメスになる。今宵あなたに家族を授けます。神と私に感謝なさい。メリクリ」　
　ちょっと待て。昨日男に振られ、家族などいらないと、お互い生涯独身だよと、泣きながらそうオレに言ったのは、飼い主あんたじゃないか。
　ワイン片手にじっと覗き込んでいた飼い主。
「へぇ……もう求愛されてんの。あんた」
　その妬んだ目にオレはギョッ。
　続いて祝い酒のワインが、オレの上からじょろじょろじょろ……。
　り、理不尽‼