18
12

私と父の間には壁がある。
それはどんなに動いても、当然の様に、常に存在する。

母に紹介された時、優しそうな人だと思った。私は素直に再婚を祝福した。

父は見た目通り優しかった。

過ぎるくらいに。

壁が出たのはその頃だ。
父が私に気を使い、それを感じた私が父に遠慮する。そうやって壁が造られた。

ある晩、イライラして私は母を突き飛ばした。
「母さんに何をするんだ」
父がリビングから飛び出した。
「うるさいな」
不貞腐れた私に、壁越しの父は手を振り上げた。

その瞬間。

「ぶっ」という破裂音が響いた。

母が笑い出した。
「あはは、あなたこんな時に…くさっ」
私も笑った。
「もう、ぶたれ…くさっ」
父のおならはその優しさぐらいくさかった。
「え、そんなには…くさっ」

それから壁は無くなり、本当の親子のように本音を言い合えるようになった。
わが家は今日も優しさとおならに包まれている。
その他
公開:18/12/22 14:36

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容