王子様は狼青年

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どうしよう、こっち向いた。
座ってると私の目線が高いから、威圧感はないけど、緊張する。サンタ紛いの真っ赤なコート着た女が、いきなり背後に登場。しかも私、眼鏡、泥棒したみたいじゃない?――まずい睨んでる。絶対怒られる!
「済みません、俺……!」
ん、何か謝られた様に聞こえた?――あ、やだ立たないで。まさか暴力!?

ドサドサバサッ!!
鞄の中身、雪崩。
ひょっとして、ちょっと鈍い人?大きくて、顔がきつめで、低い声。家で飼ってるボルゾイに似てる。この感じ、おとぎ話にも似てる。そう、赤ずきんと
「……狼」

唇が一文字に結んだ。
そんなつもりなかった。ちゃんと見た顔、格好良いって。透き通った眼、綺麗って。私、赤ずきんの狼、結構好きで――
何で眼鏡で隠すの。勿体ない。
しゃがんで荷物を鞄に突っ込む手が、叱られた子供みたい。
「ハンカチ、済みません」
「ハンカチ、ありがとう」

――台詞、被った。
青春
公開:18/12/22 14:00
更新:19/07/04 12:45
図書室のおとぎ話⑧

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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