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マクドナルドでの忘年会を終えて、私はタクシーで帰ることにした。
私には人望がない。
私は小さな会社を経営しているが、社員たちが皆、私の陰口でコミュニケーションを図っているのを知っている。センスが悪い。ありえない。意味不明。と散々だ。

運転手は目の見えない人だった。
自動運転が普及して、運転手のいないタクシーには慣れていたけれど、このスタイルは初めてだった。家に帰っても妻は寝ているだろうし、そもそも私たち夫婦に会話はない。今は話せることがうれしかった。
聞けば、今ではこどもの運転手や、犬の運転手もいるらしい。
運転はしないのだから正確には運転手ではないけれど、話し相手になるのが仕事だという。
目の見えない彼の得意はギターの弾き語りだ。私は泣ける演歌をリクエストした。
流れる車窓が涙で滲む。
「あぁ俺はどうして…」
「社長さん。あのね…」
「言ってよ」

「マックで忘年会はないよ」
「えっ」
公開:18/12/23 11:18

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