役ばらい
12
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「お母さん、このお寺、なんかあやしくない?字も間違ってるし」
「あれで合ってるの。ちょっと待ってて。申し込みしてくるから」
人だかりができている看板には、役払い受付、とある。厄ではない。
「あんたも色んなとこで、色んな役回りさせられてきたんでしょ。顔に書いてあるわよ。でも大丈夫。このお寺、一番終わらせたい役、払ってくれるから」
何も話していないのに、お母さんは全部分かってたんだ。
私が自分にうんざりしてること。もう、この町から逃げ出したいこと。
「じゃあ、役を払ったら、私はどうなんの?」
「あんたはあんた。東京出たって新しい役はどんどん纏わりついてくるけどね」
敵わないな、まったく。本当の私を、まるごと包んでくれる。
「あーあ、私も払っちゃおうかな。お母さん役」
ちょっと待ってよ。口に出す前に読経が始まった。お母さんはニヤリと笑って、目を閉じ前を向いてしまった。
「あれで合ってるの。ちょっと待ってて。申し込みしてくるから」
人だかりができている看板には、役払い受付、とある。厄ではない。
「あんたも色んなとこで、色んな役回りさせられてきたんでしょ。顔に書いてあるわよ。でも大丈夫。このお寺、一番終わらせたい役、払ってくれるから」
何も話していないのに、お母さんは全部分かってたんだ。
私が自分にうんざりしてること。もう、この町から逃げ出したいこと。
「じゃあ、役を払ったら、私はどうなんの?」
「あんたはあんた。東京出たって新しい役はどんどん纏わりついてくるけどね」
敵わないな、まったく。本当の私を、まるごと包んでくれる。
「あーあ、私も払っちゃおうかな。お母さん役」
ちょっと待ってよ。口に出す前に読経が始まった。お母さんはニヤリと笑って、目を閉じ前を向いてしまった。
その他
公開:18/12/22 23:09
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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