シンデレラブルーのハンカチ

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とりあえず、借りた(貸された)ハンカチは返さないと。
汚損を免れた本のお礼も言うべきだ。しかし、起きた時には消えてたXさんを、どうやって特定すればいいのか?運悪くカウンターも不在で、目撃証言も取れやしない。
証拠物件は、空色に白の水玉。
当然、無記名だ。小学生じゃあるまいし。第一、面識のない(推定)男の顔に敷いたブツを、いくら洗濯したと言って、女の子(仮定)が回収に来るか。
捨てたつもりだな。そう結論し、しんみりした。

時間が被るという事は、多分同じ講義の受講者。つまりこんな所でサボってないで、講義棟に行った方が遭遇率は高い。単位を落とせば、来期のカリキュラムもきつくなる。
推理も計算も働くのに、今日も今日とて定位置に陣取り、ろくに進まないページを広げる。時計の合奏もずいぶん遠い。相棒の鞄に加え、畳んだ水玉ブルーが、机の角で憂鬱そうに正座してる。

――いっそ、狸寝入りでもしてみようか。
青春
公開:18/12/20 21:00
図書室のおとぎ話③

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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