ある日眠れる本の上

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大学2年まで、眼鏡を掛けてた。
物心付く頃からの本好きが高じ、相当目が悪かった。暇さえあれば本ばかり読んで、友達も少なかった。図書室に入り浸って、講義の合間とか、昼とか、馬鹿に長い休暇とか、とにかく文字に触れてないと落ち着かなかった。
紙とインクと、少し黴の臭いのするページの間の紐を弄りつつ、背中に猫を飼って、人の来ない専門書架の陰、隅っこの机を占領してた。
ずっしり重い鞄を相棒に、見飽きた窓を周辺視野に映しながら。秒針の絶え間ないコチコチと、針の重なる半拍ずれた…コチ、と、腕時計の細い囀りの合奏を、毎日聞いてた。

今頃の、雪がえらく積もった午後。
教授が来れず休講になって、寒い中帰るのも億劫で、暖房の利いた馴染みの席、つい転寝して――。
起きたら視界がぼやけて。指で探った机に、畳んだ眼鏡。
あと、枕にしちゃってた本と、顔の下に、見慣れないハンカチ。
それが確か、彼女との馴れ初めだった。
青春
公開:18/12/20 19:00
図書室のおとぎ話① Withほんのりメモリアル

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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