はじめましてさようなら

まさか余命3ヶ月なんて言われるとは思わなかった。医者曰く、癌が全身に広がっているらしい。1人で仕事も、子育ても頑張ってきたのに。手の打ちようがない状況の中、頭をよぎったのは娘のことだった。
娘は今妊娠3ヶ月。彼女の出産を見届けず死ぬことなんて、母として、祖母としてできない。
出産を見届けるという目標のできた私の気力はすごかった。癌の進行はほぼ止まり、医者は奇跡だと驚いた。
そして娘の出産の日がやってきた。母子ともに健康。無理を言って抱かせてもらった孫はとても温かかった。生きてきてよかった。比喩ではなく心からそう思った。
安心した私はすぐに容体が悪化した。娘の出産からたった3日で生死の狭間を彷徨うまでになった。今は夜だろうか、昼だろうか。娘が話しかけてきた。
「お母さん、お母さん、本当にありがとう。ねえ、」

こちらこそ、ありがとう。

声は出なかった。でも伝わったでしょう？家族だから。