イヤホン

2
4

確かにその瞬間に僕が感じたことは嫉妬だった。

嫉妬とは意外にも気付かないもので、自分は嫉妬なんかしてはいないという動作をした時点ですでにしたいたりする。

してはいない、しないように振舞ってやろうと思った時点でしていたりする。

自然にこみ上げるものを外に出さないために、人は不自然さに変える。

それが突拍子もない会話だったり、動作だったりする。

僕の場合はイヤホンを音楽を聴きもしないのに取り出すという動作だった。

聴きもしないのに、イヤホンコードのぐちゃぐちゃな絡み具合をなおしていく。

頭の中では言葉にならない文字たちが反芻する。

反芻する言葉を受け止めないために、イヤホンコードを治していく。

一体何がしたいのかわからないのに動いてしまったり、言葉を吐いてしまったりする、これがいわゆる「嫉妬」なんだな、っていうのを知ったのは27の冬だった。
恋愛
公開:18/12/20 01:42

こーり( トーキョー )

ショートショート小説を書いています。

歪んで綺麗な、いびつで綺麗な、泥臭くて綺麗な物が好きです。
ひねくれているって思っているってことはきっとまっすぐで憧れているだけなんだと思う。

純度の高い文章で、等身大でいきます。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容