越冬、そして春

世の中がクリスマスだの年末だの、色めき立っているときにする勉強も悪くない。1ヶ月後にセンター試験が迫っていることを除けば。

本腰を入れて学習するために選んだ場所は、自室の勉強机。ここならテレビの音も、家族の話し声も聞こえない上に、リラックスしてやるべきことができる。とはいえ、何時間も集中するのは難しい。体をほぐすため、軽く休憩することにした。しかし予想以上に疲れていたのか、ふと目を閉じると海の底に沈むように、ぱたりと眠ってしまった。

寝ている時、夢を見た。それは、咲き誇る桜の下で母と写真を撮る夢だった。

はっと目を覚ますと、置いた覚えのないティーカップが置いてあった。ティーカップの底には紙切れ。

「無理しないでね。」

無理するのが受験なんだよなぁ。緩む頰を抑え、ふわっと立ち上る香りを嗅ぐ。ティーカップに注がれた甘い甘いミルクティー。一口含むと愛情の味がした。