予測変換ミス

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 冷めたカフェオレが1杯。淹れたてのそれよりも甘くて、正直もう飲みたくない。
 斜め前のテーブルには空のグラスが一つ。サクランボの種が私を見つめている。

 彼が、彼女に振られるのは知っていた。彼にはそんな気が無い事も。彼女は私の友達の友達。女子の情報網では悲報も朗報も一つの紙面にまとめられてやってくる。
よかった、彼が傷し……誰のものでもなくなって。知りたくなかった、彼がそれを望んでいない事なんて。

 別れの逢瀬は22日、最終講義後いつものカフェにて。女の子って、気を許すと何でも言っちゃうところがある。
 悲しむ彼に寄り添いたい、あわよくば……なんて上手くいくとは思わなかったけどさ。糸口くらいにはなると思ってたよ、正直ね。 

 手をつないで出てった二人の後ろ姿が揺れる。甘くて苦い残り香が悔しい。聞いてないよ。彼女が説得に負けて、結局また夏の終わりと同じ雰囲気を纏うことになるなんて。
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公開:18/12/22 23:00

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