その崖を下りたい

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けれど、誰かの通った道を行くのはきらいだった。
方法さえわかれば、できないことなんてありはしない。だからこそ迷わなかった。

薄闇にぼやけたデスクでペンを握り、僕は珈琲と薬を乱暴に喉の奥へ追いやった。



目を開けると、そこはどこかの山道だった。
前には崖がある。後ろには、影がある。
僕を照らす太陽が雲に隠されて一度影が消えると、もう一度射した陽は、僕の前に影を作った。

「鵯越の逆落としだよ」

影が言った。高い、可愛らしい声だった。
影は影だというのに、なぜかそれは微笑んだような気がしたけれど、もう影は僕から離れて一足先に崖を下り始めていたから、本当のところはわからなかった。
僕は影を追って崖に飛び込んだ。
下るというより、半ば転げ落ちるような形になりながら、それでも影から目を離さず、とにかく食らいついた。
そうして開けた崖下で、逆さまで裏返しで不可思議な、何かの背後に触れたのだ。
青春
公開:18/12/21 21:41
更新:18/12/21 23:02
undoodnu祭 その影が追いたい

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