親子の対話

「ただいま」
「おかえり。ご飯できてるわよ。お父さん遅いし、先に食べるでしょ？」

「弘樹、今日は学校でどんなことがあったの？」
「別に……」
「最近は誰と仲が良いの？」
「別に……」
うるさいなぁ。高校には勉強しに行ってるんだ、何もないよ。

夕飯を食べ終えるなり自室にこもるとスマホのアプリを起動する。
最近、好きなアイドルの情報交換のためSNSでファン友達と交流しているけど、親に説明するとかありえん無理。

比呂『ただいまー！』
ゆき『おかえり～。今日学校どうだった？』
比呂『試験の範囲が広くてしにそう笑』
ゆき『大変だけど推しのためなら頑張れるでしょ』
比呂『もちろん！試験終わったらライブあるしがんばる！』
タカ『次、比呂の推しソロあるってー』
比呂『マジで？ヤバい！めっちゃ嬉しい！』

「リアルでもこんな風に話してくれたらいいのに」
台所で母が、電車で父が、スマホ片手につぶやいた。