結果オーライ

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 満員電車が苦手な私は、気を紛わそうと、買い求めた電車組立キットを取り出した。精巧な24両編成の1/1スケールで、電動だ。組み立てていると気持ちが落ち着いた。完成して顔を上げると、乗客の視線が私に集まっている。
 私は慌てて、模型を鞄にしまおうとした。
「ちょ、待てよ」
 若い男が顔を近づけた。
「すいてるな、ソレ」
 その言葉は漣のように広がり、怒号となって戻ってきた。
「空いてる車両があるなら、乗せろ!」
 模型に乗るなんて無理だ。そんな用途は想定外のはずだし、怪我人が出たら私のせいになるかも… でも、そうしないと、私は八つ裂きにされそうだった。
「ど、どうぞ」
 プシューっと扉を開けると、大勢が移動した。車両は空いて、穏やかになった。
 私は、模型の置き場に困って、つり革にぶら下げ、結果オーライだと思った。
 そのころ、他の車両に「すいてる車両があるらしい」との噂が広まりつつあった。
ファンタジー
公開:18/12/21 15:49

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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