ラベンダー畑の夢

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「いつか北海道のラベンダー畑で家族写真を撮りたい」

それは、母が初めて語った夢だった。
ぼくは自分の無力さに打ちひしがられながらも、いつか叶えてあげたい、いや叶えよう、と唇を噛み締めた。

あのとき望んだ光景が今、目の前にある。
並んで歩く母と妹は、ああだこうだ言いながら、スマホを手にはしゃいでいる。どの角度から撮るのがベストか研究しているらしい。
その様子を見ながらにこにこしている父の背中を、ぼくは見ている。
いい天気やなぁ、と声をこぼした。

「お前もこっち来んかい」

振り返って父は言う。その先で、母と妹が手を振って笑っている。

「こっち、こっち。写真撮ろうや」

準備ができたらしい。ぼうっとしていないで、さっきまでの様子も撮っておけばよかったかなぁ、と思う。

ラベンダー畑の中で笑いかける家族のほうへ、ぼくは走り出す。

母の夢は、いつのまにか、ぼくの夢にもなっていたみたいだ。
その他
公開:18/12/21 08:43
家族

yuna

400字のことばを紡ぎます。

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