スノーグローブ

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マリさんは泥棒だ。
その日、マリさんはスノーボールを持って帰ってきた。透明なガラス玉の中に風景があって、空気のかわりに液体が満たされた球を逆さまにすると雪が舞う。
ひっくり返すためには両手で抱えて持たなければならない大きなスノーボールだった。雪だるまが並ぶ公園で、子どもたちが雪合戦をしている。
ボールを逆さまにして、横に回転させながらテーブルに置いた。ボールの中は猛吹雪だ。
「スノーグローブっていうんだって」
「スノーボールじゃなくて?」
「グローブって言ってたよ」
『雪の玉』じゃなくて、『雪の世界』だったのか。
吹雪にさらされた広場も数秒待てば、静まり返った雪景色になる。
「マリさん、僕を盗んで雪の世界に放り込んでよ」
マリさんは僕の右肩にそっと手を掛けて、左肩に頬をのせた。そうしてするりと僕の痛みを盗んでしまう。
ファンタジー
公開:18/12/20 22:00
更新:18/12/21 17:16

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