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差し向かいに座る彼の話は、本筋がなく、転々とし、終着点が全く見えなかった。
彼は心底楽しそうな表情をし、私に話をするが、残念なことに、私は全く聞く耳を持たなかった。いや、持てなかったのである。
彼は若かりし頃の武勇伝を自慢気に私に話していたらしいが、私の耳はすっかりとそれに馴染んでしまい、面白みに欠け、決して彼の気持ちを傷つけることなく、曖昧な返事をし、その場をしのいだのであった。
勿論、私は膠着な彼が好きだが、どこか嘘に聞こえるような、神話に基づくような話をされると、冗談のつもりで、私を笑かそうとしているのかもと思い込んでしまい、どう返事をしたらいいのか、どう反動したらいいのか、深く黒い海へと沈んでしまうのであった。
彼の気持ちを一番に知りたいと思う余り、彼の母のような態度で接しては、本筋とやらを掴み損ねたといった方が美学に近い。
だが、彼の浮き沈みの激しい気持ちとやらは・・・
その他
公開:18/12/18 23:25

神代博志( グスク )









 

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