なつかシュート

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21XX年、タイムトラベル研究の副産物として発見された物質から作られたバスケットボールが発売された。
見た目は普通のボールなのだが、シュートを決めると、決めた本人が一定時間懐かしい思い出に浸れるという代物だ。
しかもロングシュートであればあるほど昔の記憶にたどり着け、理論上は祖先の記憶ともつながっているという。
はじめは若者の間でのファッション的なヒットだったが、このボールの力に世間が気づくのにそれほど時間はかからなかった。
長い人生を重ねた老人の間に空前のバスケブームが巻き起こり、大学では考古学部の依頼で物理学部が数百メートルのロングシュートに挑むプロジェクトが立ち上がった。
しかしその一方、従来バスケットボールの華だったダンクシュートが「昨日のことしか思い出せないじゃん」と見向きもされなくなってしまったことは、あまり知られていない。
SF
公開:18/12/18 22:01

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