妄想使い

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何て放射脳だ。
この区画一帯が奴の妖花で埋もれてやがる。

件の幻視力発電所から逃げた妄想使いの一人。奴らは通常の幻視人と違い、規格外の妄想力を持つという。
そこで自影隊の中でも、奴ら妄想使いに匹敵するといわれるこの俺が駆り出された。
「ここからは独りで行く」
「少佐、ご武運を」
妄想力を抑える頭部PSIを脱ぎ捨て、俺は貘どもを解き放った。
「ゆけ⋯⋯」
本来なら瞬く間に相手の妄想を喰らい尽くすはずの妄獣が、奴には全く歯が立たない。逆に貘どもは奴の妄想に取り込まれ、一疋は謎の少女に飼いならされ、またある一疋は「はたため」られ、またある一疋は髪留めのクマに喰われた。
「くっ、妄想が噛み合わんッ!」

それどころか奴の妄想が俺の脳内に、じわじわと侵入してくる。
「まずい、一時撤退⋯⋯」
と、後ろに一歩下がると、俺の耳元で謎の呪文を囁く少女の声が聴こえ始めた。
あんどぅおぅでぃえぬゆぅう⋯⋯。
SF
公開:18/12/18 19:23
更新:19/04/04 15:18
その影が追いたい undoodnu祭り 塔京

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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